かたっぽうの恋

先生の授業

私は、こんなにドキドキして教室で授業が始まるのを待つのは生まれて初めてだった。


まず、担任の先生が入って来た時に期待してた分、がっかりした。



「では今から、実習生の吾妻先生による研究授業を始めます」


担任が言うと、ドアが開かれた。


そこには、私がずっと逢いたいと思っていた先生の姿があって、スーツ姿だった。


うわ、かっっ…。



クラスの女子が何人も私と同じ思いを胸にしたと思う。



先生は、ぺこりと頭を下げて入って来た。



「研究授業をさせていただきます、吾妻です。今日よろしくお願いします。」


「よろしくお願いしまーす！」

１年Ａ組みんなで頭を下げたり拍手をしたりしながら先生に答えた。



「それでは授業を始めさせていただきます」

と先生が教卓に上がった時にクラスの男子が手を挙げた。



「先生って雑誌モデルしてますよねぇ」



そうだ。美保から聞いて知っていたけど、先生は若者に大人気のファッション雑誌「zipper」の人気モデルをやっているんだ。




その人気はかなりのもので、雑誌での無口でクールな印象とは裏腹に、素顔は人当たりが良くて穏やか性格で、顔もルックスもカッコイいと男女共に支持されている。


そんな人気モデル、吾妻理一も今は教育実習生。

教室の後ろで先生を見張りに来た、大学の教授やらにビクビクしている。


「そ、その話はまた授業が終わったらいくらでも話すから」


「えっ、聞かせてくれんの。やった」



人気モデルも大変だなぁ。
< 204 / 230 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop