かたっぽうの恋
カッコよくて、私は先生の瞳に吸い込まれそうになった。


「皆さんも、たくさん悩んで、自分の望む未来に進んでください。」





ぱちぱちぱち…


振り返ると、教室の後ろにいる藤原先生と教授が大きな拍手をしていた。

その拍手に乗っかり、私たち生徒、担任。結局全員から拍手が送られた。

照れたのか、先生は早口で「今日はありがとうございました。授業を終わります!」、そう言って教室を後にした。




私は、先生の言葉が頭から離れなかった。



辛くなったら、大切な人を…。





私の、大切な人は…。



ガラガラカラ…。
先生が出て行ったドアが再び開き、出て行ったはずの先生が戻ってきた。


「アンケート用紙を配るのを忘れてました。書いてください」


最後の最後で、腰が低いサラリーマンみたいにアンケートを配る先生。


教室から、ふたたび笑い声が聞こえた。




配れたプリントに目を通すと…。



①授業の進め方はどうでしたか?

うん、いろいろ勉強になったし楽しかったな。やっぱりに楽しいのが一番だよ。


②説明はわかりやすかったですか?

たまにスケベおやじが降臨してたけど、内容は理解できたと思う。


③今回の実習生にひとこと。(なんでもいいよ)



先生に、……なんて書こうかな。





うーん。これからも、勉強頑張ってください。かな?


でもなんか、よそよそしい感じがする……。







なんでもいい、んだよね。




…………。
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