かたっぽうの恋
「心配いらねーよ」
淳子はそう言った。
たしかに、美保と田中くんは幼なじみ。美保の事は田中くんが、田中くんの事は美保が良く知っている。
だから私は気になりながらも、淳子と昇降口でわかれて指導室に向かった。
指導室の扉の下から、部屋の灯りが漏れている。
それを見て、なんだか嬉しいような胸がくすぐったくなった。
ノックをしようと手を伸ばした時、イタズラ心が働いた私は、伸ばした手をドアノブに乗せ、ノックをしないで扉を開けた。
「―――え…」
部屋に入った私は、思っていた光景とはぜんぜん違う光景を目にして、動きが止まった。
まるで金縛りにあったみたいに動けない、動かせるのは目だけだった。
何も考えれない、ただ涙が溢れた。
まぶたを閉じてしまいたかった。