かたっぽうの恋
窓から見える沈んでいく夕日、空は藍色に染まっていた。



「…話し、聞いて?」



襟を捕んだ手をぐいっと引き寄せて、私の身体を抱きしめた。



ま まただ、また…
抱きしめられた。



でも、先生にとって抱きしめるなんて…。








モワモワモワン…と頭に浮かび上がる、淫らな先程の女性と先生のベッドの上での姿。







ジワジワと目頭から涙が溢れだした。






「うえ~~………ぇ」

「わっ、泣くなよ!」

「だってわっかん…ないもん」


先生の事がわからない。








どうして、こんな事するの?
こんな風に抱きしめたりしたら、私なにも知らないから…。




「こんな事されたら…好きになっていいって思うじゃない」





先生も、そうなんだって…
自惚れちゃうじゃん!







「違うなら、もうしないで…こんな事」




そんな事言っても、好きになってるから…







もう、手遅れだけど…。






その時、先生が私の手を引いて、ズンズンズンと速歩き。



「せっせんせ、はなしてよ!」



「無視!」




むっ無視って、わわっ!


歩くのが速くて、着いて行くのに私は小走り。



そして、指導室に戻る。

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