かたっぽうの恋
私も先生も帰ったと思った楓さんが現れたので、驚き固まった。
「急にいなくなるから…黙って帰るわけにもいかないし…戻ったと思ったらイチャイチャと」
呆れた表情の楓さんは、スラッとした長い足を進め、私と先生の前を通る。
楓さんに…
全部、聞かれてたんだ!
すると、楓さんは背中を向けたまま…
「りーち、生徒に手を出した事…英知にいにバレたら殺されちゃうね☆」
「っちょ、おま!英知に話す気かよ!」
慌てる先生、だけど私の事を守るように しっかり抱きしめてくれている。
楓さんはいたずらっこのような表情で振り返りながら、くすっと笑った。
「片思いだった恋が叶ったんだし、幸せな事じゃん!幸せになって」
そういうと、楓さんは指導室を後にした。
「……なんだよ、アイツ。いきなり現れて…」
「だけど、楓さんのおかげで先生と両思いになれたんだよね。感謝だね」
私が言うと、先生は「…だな」と笑った。
数秒後、数分後になにが起きるかはわからない。
だから、ドキドキするんだと思う。
ねえ、先生?
かたっぽうの恋には、もうかたっぽうの恋がある。
先生が私をずっと好きでいてくれたなんて思わなかった。
二宮くんを好きになって。
先生に相談して、
二宮くんよりも先生を
好きになるなんて……ね。
たくさん遠回りして、やっと重なった私たちの恋。
大切にしようね。