かたっぽうの恋

興奮した私は言葉を兄へと投げつけた。



「落ち着いたら学校だってちゃんと行くから、みんなとも会うよ、でも今は誰とも話したくないの」

声が震えて、
息が乱れる。




「―――ひとりでいたいの」


シンと部屋が静まり返る。






ごめんね、お兄ちゃん。







「眞央、なにがあったんだ?」


「………」


「部屋でひとりでずっと泣いて、なにか楽になったのか?」




一週間、私は部屋に引きこもった。


毎日様子を伺いに来てくれた、お母さん、お父さん、お兄ちゃんとも会わずにいた。


毎日、お見舞いに来てくれていた、友達の敦子と美保にも会わないで、


声を殺して、ひとりぼっちで、目を腫らして泣いていた。



それで、なにか変化はあったのかな、気持ちは楽になったのかな?



ううん、なにも、悲しい気持ちが大きくなるだけ、気持ちが乱れるばっかり。





「お兄ちゃん、誰にも言わない、約束するよ。」




そう言ってお兄ちゃんは、テーブルの上にあるティッシュ箱を私に渡して、ベッドにストンと腰を降ろし、私の隣に座った。







「―――話し、聞いてくれるの?」


「お前が話してくれるならな」





兄弟とは偉大な関係だと思う。




知られたくない悩みも、親にも話せないことでも兄弟には話せちゃったりする。



お兄ちゃんの優しさが嬉しくて、申し訳なくて





張り詰めていた糸が緩んでいく。




「――じゃあ、上手ぐぅ話ぜるかわかんぬぁいげど、ジュピっ私……じづは」


「と、とりあえず、鼻をかもうか…」







それは、一週間前に遡(さかのぼ)る。








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