かたっぽうの恋
「そっかそっか」
実習生さんはそう言って私にグラスを差し出した。
「すみません、いただきます」
オレンジジュースの入ったグラスを受けとると、
氷と氷がぶつかり綺麗な音がした。
一口、口に含むと、甘酸っぱくて、後味さっぱりで、
緊張していた糸が緩んだ。
「ん~しょっ、さてさて~」
実習生さんは、私の向かいにあるソファーに腰かけ、
テーブルの上のファイルを開くと、
ボールペンで何か記入しだした。
かっこいいなぁ、この人。
近くで見れば見るほど、
整った顔立ちしていて、
眉は太めでキリッと男らしく、
目は綺麗なパッチリ二重、
鼻は高くてスッとしている。
肌も男の人なのにツヤツヤで小顔。
ほんと、こうして見ると素敵なひ…
「――今までいろんな生徒が来たけど、お嬢さんが一番、積極的」
「ぶぶっ!」
ジュース吹いちゃった
「きたね~」
いたずらっこみたいに、実習生さんがクククと笑う。
「だから、あれは違うんです!」
顔が熱いよ、実習生さん お願いだから誤解しないでよぉ!
「名前教えてくれる?」
シカトされたぁぁ!
ひどいひどい!
「うぅん、――い、1年A組の岸本 眞央です」
「1年ね、高校は慣れた?」
「え、ま…まだあんまり」
一週間、引きこもりしてたんで
「そっかそっか、俺も一緒、一週間前から実習に来てね、まだまだぁ」
その割に、ぐっすりとお休みしてたみたいですけども?