かたっぽうの恋
口の端が、ニッと上がって
微笑してるんだけど、なんか


目が、目がまったく笑ってないよ!!
どうしたんだろう、私なにか変な事言ったのかな。


なんか黒い笑顔だなぁ。



私の話しが終わると、実習生さんはファイルに記入していた手がピタッと止まった。




「――あの、…顔が怖いですよ?」


すると、暗黒の笑顔の実習生さんが顔をあげ、キュッと真剣な顔になった。

「笑顔で聞いた方が話やすいと思ってな、……うーん、話を聞いたところ、受験勉強がんばったのはすごいな、感心するよ」


うん、必死に勉強したもんね!


「だけど、他にはなにも努力をしてないんじゃないか?」

「――え」


「偶然、肝試しで仲良くなって、偶然同じクラスになってって、偶然が重なった中で、なにか勇気だしてデートに誘うとか、イベントとか起こしたりすれば、もっと近づけると思うよ」


「え、そんな事……、恥ずかしくて」


「恋愛なんて、恥ずかしくていいんだよ、悩んでるだけじゃダメって事だ」



悩んでるだけ…、私



「それと、二宮が月島って子と一緒にいて、なんともラブラブな様子だったんで、見てられなかった…と?」

「簡単に話せばそんな感じ……」



「――ふっ…、小娘め」


本当にどうしたの!?




実習生さんは長い足を組み、前のめりだった態勢を崩して、後ろに深くもたれた。



「負けてるかもなぁ、気持ちが」


「ま、負けてる!?」


「月島って子はお前にとったら、今はライバルなわけだよ、二宮ってやつが月島を見て、デレッとしてたから、お前は出る幕がないって思ったわけだよな」


そう…、だよね、実習生さんの言うことは事実


私は、2人を見てられなかった
負けた気がしたから?


「お前は今、月島という存在に気持ちで負けちゃってるんだよ、マジで好きならさぁ、お前の気持ちぶつけるぐらいで行かないと、今の小僧は振り向いてくれないぞ?」


気持ちで負けてっ……る、


月島さんは二宮くんと幼稚園からの長い付き合いかもしれないけど!


でも、誰にもこの思いで負けたくないよ。
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