かたっぽうの恋

実はそういう類いに弱い私。
(ホラー映画なんてもってのほか!!)




乗り気ではなかった。



夕日色の空がゆっくりと暗くなっていき、昼間の暑さと違って涼しい風が、
私のワンピースを揺らす。



ウシガエルの鳴き声が聞こえて、
少し不気味で帰りたいと思ったけど、
そんな気持ちは一瞬で消えた。


集合場所の翠川神社(みどりかわじんじゃ)の鳥居の前に、二宮くんがいた。




二宮くんが手を振っている。
私に気がついて!


私も手を振り、二宮くんに駆け寄った。


「あ、あの、もしかして肝試し…」

「うん、田中に誘われて、たしか一組の?」
「あ、はい!岸本です!」




今まで話したこともなかった二宮くんが、そこにいる。



こんな目の前に、



ドキドキする。






「俺は二組の二宮秀司です
えっと、よろしく!」


はにかみながらの挨拶。


「よ、よろしくお願いします!」



二宮くんって、
こんな声してるんだ、
こんな風に話すんだ。


私を見つめる視線がこんなに高いこと、
思ったより声が低い事。


ずっと見ていたはずなのに、
挨拶だけでこんなに発見があった。



今日、来てよかった!

二人っきりで、みんなが来るのを待つ時間が夢の中みたい。




―――私のドキドキ、
二宮くんに聞こえてないかな?


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