かたっぽうの恋
「乗れよ」
そういうと、実習生さんは腕を伸ばして助手席のドアを開ける。
「い、いいんですか?」
「うん、乗って」
うわぁ、なんかドキドキする、
実習生とはいえ、男の人の車。
「じゃあ…失礼し」
《眞央っ!なんだどうした誰の声だ!なにがあった!》
あ…、忘れるとこだった、お兄ちゃんと通話中だったんだ。
お兄ちゃんの声は携帯から漏れて、実習生さんにも丸聞こえだった。
実習生さんは口元に拳を当てて、シシシと笑う。
お兄ちゃんのバカァ…、
恥ずかしいでしょう!
実習生さんが遠慮して口パクと手の動きだけで、「乗って乗って」
と言うので、
私は急いで車に乗り込み、
携帯を耳に当てて、小声で話した。
「お、お兄ちゃん?、迎えは大丈夫だよ!
学校の先生が送ってくれるから」
《学校の先生だと!それ男なの!?》
興奮するお兄ちゃん、声が大きい
み、耳が痛いよ!
「じゃあ、すぐ帰るから!!」
《眞央っ!?ちょっ待っ、ピ!!》
電源ボタンを押した携帯の画面が待受画面に戻った。
お兄ちゃんはまだ何か言ってたけど、大丈夫。
ふう…、過保護なんだから