かたっぽうの恋
ふぅ……、恥ずかしかった。
「今の、お兄さん?」
「は、はい」
実習生さんの落ち着いた声に、私は反射的に返事をした。
運転席に座ってる実習生さんを見ると、
ハンドルを持っている手に右頬を乗せて、私を見つめていた。
「いや、すみません、うるさい兄で……」
よくわからない、理由はわからないけど
思わず、目を逸らしてしまった。
私と実習生さんの間にあるCD-ROMのネオンが青く輝いている。
薄暗い車内で私を見つめる実習生さんの瞳に、ドキドキした。
少し車内は魅惑な雰囲気が漂ってる………なんて、
思ってるのは私だけかな。
「謝る事ないよ、良い兄貴じゃんか」
実習生さんは、他の車が来てないことを確認すると、
ギアをグググッと動かし、車を走らせた。
私はシートベルトをカチッと閉めて、
膝の上に置いたカバンの内ポケットに携帯をしまった。
「立派な車ですね、この自動車」
車内の匂いも好きだなぁ、
ラベンダーの香りがする。
「ありがと、でもこれ親父からの中古なんだよね」
これが中古?
へぇ、綺麗なのに
にしても男の人の車って、
こんな感じなんだ
余計な物がない。
あるのは、上についてるミラーにぶら下がった、香りのするリーフに、
後部席にティッシュ箱のみ
「それと、ありがとうございます、暗くなりそうだったから助かりますよ」
「ん?、女の子の独り歩きは危ないからな、送った方が良いと思ったんだ、気にするなよ」
うぅ、なんか嬉しいかも、
私の事、心配してくれたんだ。
意地悪だけど…、
スケベだけど……あ!
まさか…