かたっぽうの恋



「もう星が出てる…」


「え?、……ほんとだ」



見上げると、空はもう真っ暗で
夜空にはたくさんの星が散らばっていた。


綺麗だった。




「好きなやつの一番近くには、自分がいたいよな」


「……うん」



「そら、そうだ…」




実習生さんは、よいしょっと言って、
身体を起き上げると、


私の膝にあったハンカチを手に取り、
こぼれ落ちる涙を拭いてくれた。



「……片思いなんて、するもんじゃねーよな」


「う、うん…」


「……お前、泣いてばっかだな」


「う…うん」


「―――そんな、強くないくせに」




っ、実習生さ…?



「もう、やめちゃえよ………」

その声は囁くにしても小さくて、私の耳には聞き取れない。



目を見開いて ぼんやりと実習生さんを見つめる私に気がついた実習生さん。



「あ!!悪い。俺なに言ってん……」



「実習生さっ、涙。はなみじゅも止まらない」


互いの視線がぶつかると、涙と鼻水でひどくなった私を見て、実習生さんは笑いが込み上げるのを堪えたけど、すぐに吹き出して


「ぷっ!…、ハイよ。」



そう言って私の涙を拭ってくれる実習生さん。



「うぅ、ありがとう…」


「ばーか。涙ぐらい、いつでも拭いてやる」





< 84 / 230 >

この作品をシェア

pagetop