かたっぽうの恋
「公園に何しに行くの?」
玄関で靴を履く秀ちゃん、
「公園の桜の木、夜の桜が見たくなったの」
大好きな秀ちゃんの
つむじを見つめた。
そう、家の近くの公園には
大きな桜の木がある。
「厚着した?」
秀ちゃんは玄関のドアを少し開けて、
私に念入りに確認をする。
「いっぱい着たよ」
もこもこの靴下に、
ヒートテックも着込んでる。
「じゃあ、行くか」
妹みたいって思われたまま、
気持ちを受け入れられても
秀ちゃんの気持ちは私に向かないって、
そんなの嫌だって…
だけど、岸本眞央ちゃんと会って
私、不安になった…
眞央ちゃんは秀ちゃんの事が
好きなんだと思う。
秀ちゃん、眞央ちゃんと話してる時
すごく子供みたいだった。
私といるときは、あんなに
大人っぽいのに…
眞央ちゃんに、秀ちゃんを取られたらって思うと怖くなった。