卒業式。
「彼に私のことを知ってもらおうと、よく数学の問題を聞きに行きました。
2年になり、クラスが変わっても頻繁に彼の元を訪れ、その年の誕生日に一緒に写真を取ってもらいました。
そして3年に上がり、幸運なことに彼もこのC組で最後の高校生活を送ることになったのです。
さて、当の本人はこの’彼’が自分のことだと気づいたんじゃないでしょうか?
心なしか顔が驚いているように見えます。
何年も思い続けて今、ようやく彼の目を見て言える。
私が彼に伝えたかったこと。
それは、前の私の名字が’咲良’であるという事実です。
…ふふ、皆訳が分からないという顔をしていますね。
そこで最初の手紙、母への手紙を読みたいと思います。」
一つ呼吸をして四つ折りの紙をゆっくり開く。