たった一つのプレゼント



いつも無表情で
クールな迅が

さらに不機嫌なもんで


すごく怖かった。




「和泉君遅くまでごめんね」


「大丈夫。てか
 彼氏さん?」


「あぁ…幼なじみ」


「そっか」




私は和泉君の元から
足速に迅の元へ行った。



なんだか

思ったより不機嫌で。





「迅、機嫌悪くない?」


「あ?」


「…ほら……その返事。」


「…あぁ」




あ?とか
は?とか
あぁ、とか

そんな返事だけで

全然話してくれなかった。





結局何も話さず
事務所までたどり着いて
練習室で練習を始めた。




もうすぐ高校3年生になる。


まだ外は寒くて
マフラーは手放せない。
なのに私はマフラーを
学校に忘れてしまっていた。



練習を終えて外に出ると
冷たい風が突き刺さるように
吹きかかってきた。


「さむっ」


少し涙目になりながら
固まる脚を動き始めた。


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