たった一つのプレゼント
「ごめん、和泉君」
私は両手で
近づく和泉君の身体を止めた。
「あたし…好きな人がいて…」
「………………」
「だから……」
「知ってる」
眉を下げて
切なげな表情の和泉君は
そう言った。
「幼なじみの須藤だろ?」
「どうして…」
「須藤が帰りに迎えくる時の
永野さん、どれだけ
幸せそうな表情か知ってる?」
「………………」
「いつも永野さんは
クラスの人にでさえ
心を閉ざしてるように見える。
でもあいつが来ると…」
“とても幸せな笑顔をする”
そう言って
和泉君は空き教室を出た。
そんな空き教室は
とても静かで
自分がどれだけ迅を好きか
改めて感じた。