たった一つのプレゼント



再び私の目の前に
淳平君の顔が近づいた。



私の肩を優しくつかんで
慣れた手つきで
私の唇を指でなぞると
頭を傾け、ゆっくりと
近づいてきた。




突き放せないのは


淳平君がいい人だから。



なんて綺麗事だけが
頭の中を過ぎって。




だけど



唇がぶつかりそうになった途端




無意識に
淳平君を突き放していた。





淳平君を見れば
切なげな表情で私を
見つめていた。



「…………っ…ごめん。
 あたし…キスとか
 したことないから。……
 だから……やっぱり
 受け止められない。」




「そう…だよね。
 ごめん。」






無言のまま
私は家まで送ってもらった。


時間は既に深夜で
淳平君と別れたあと
玄関を開けると、まだ
明かりがついていた。



「ただいま………」




リビングに行くと
ソファーで寝ている迅がいた。


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