僕等の軌跡 2

色々聞かれた,お金とられた,物盗まれた,暴力ふるわれた,暴言はかれた。
でもどれも違った。
全部首を横に振った。


「…もしかして…違うよな?」

何を言おうとしてるのかは、なんとなく分かった。
でもこれも違う。
私が首を横に振った瞬間、先生は一気に力を抜いた。

「そういう系じゃなくて、本当良かったぁ。」
胸がズキッてなった。
そういう系って…?

「そんな事されてたら、本当やばかった。そんな人としてありえない事…。俺らまだ手も繋いでないのに。焦った!」

あ、駄目だって思った。
言えないって…。
嫌われたくない。
先生に…ありえないって、嫌って思われたくない。


「ですよね。あ、先生そろそろ時間…。」
話をそらした。
涙を飲み込んで笑ってみせた。
これで…いい。

「じゃ…。」

違う…よくないよ。
だって先生はもう、ただの"先生"じゃない。
ありえないって、嫌って思われても…ちゃんと言わなきゃいけない。

「…先生。違うんです。…されたのは、暴力とかじゃないです。」
「え、何?まさか腕つかまれてチューされたとか?…って、んなわけないよなー。笑」

さすがに笑えなかった。
涙がでた。
否定も肯定もできずぬいた。
先生の顔が見れない。
でも…先生は分かってくれた。


「そっか。そんな事が…。ごめん。俺、今かなりいらついてる。」

そう…だよね。
他の男とキスした女なんてやだよね。
ありえないよね。

「ごめん。側にいてやれなくて、
守ってやれなくて。」
「え…?」

ふと、先生の顔を見た。
今までに見た事ないくらい、悲しい顔してた。

私が…先生の笑顔を奪った。
悲しい思いをさせた。
私が先生を傷つけちゃったんだ。

< 12 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop