僕等の軌跡 2
いつものように、塾に自習しに行った日の帰りだった。
私は1人の男の先生に、呼び止められた。
「あ、谷先生!久しぶりですね。」
「ちょっと話がある。こっち来い。」
谷先生は、よく相談事や勉強でお世話になったおじいちゃん先生。
いつも厳しいけど、優しくて…良い先生。
だけと今日の谷先生は、目つきも口調もいつもと違った。
私は空いた教室に呼ばれた。
「お前、隠してる事ないか?」
「え、何が…。」
次の言葉に私は凍りついた。
「絢哉と付き合ってんだろ。」
頭の中が真っ白になった。
声がでなかった。
どうして谷先生が…?
「やっぱりな。お前ら自分のしてる事、分かってんのか?」
自分のしてる事?
否定する事すら忘れて、もう放心状態だった。
「見損なった。お前らクズだな。…論外だ。」
「…!?」
カッとなって動きそうになった手を、ギュッと握り締めた。
「お前らみたいなクズが一緒にいたって、将来社会に切り捨てられる存在にしかならねぇ。まともな家庭だって、できない。別れるんだな。」
今何て言った?
お前らクズ…?
私の中で、何かが切れた音がした。
「私は…クズかもしれない。でも、中川先生の事まで悪くいわないで!!」
初めて先生という立場の人に怒鳴った。
自分でもびっくりしたけど、とまらなかった。
「谷先生に何が分かるの!?未来なんて決まってない。中川先生は、クズなんかじゃない。」
「…。生きてる価値ねぇな、お前。」
正直この言葉は、後の私をかなり苦しめる言葉になった。
でもこの時はもう必死で…。
「もう、何とでも言えばいいです。でも…先生には何も言わないで。校長先生にも。私だけに…して下さい。」
今の大事な時期に、先生に負担をかけたくない。
校長先生にばれたら、先生は…。
「お前らの未来なんて、知ったこっちゃねぇ。帰れ。」