魔道師と暗殺者

「ヤツをしとめろ!」


 誰かが叫ぶ。


 その手にはロケットランチャーが握られている。


 このビルごと吹き飛ばすつもりか?


 正気の沙汰とは思えなかった。


 しかし、由良には関係ない。


 いったん、階段のロビーまで後退。


 そして、跳躍。


 一気に、相手との距離を詰める。


「なっ!」


 男の驚いた声が上がる。


 ロケットランチャーというのは、失敗だったな。


 破壊力がある代わりに、小回りに欠ける。


 室内戦闘においては、圧倒的に不利な武器だ。


 由良は、一瞬にして、ロケットランチャーを構えている男の背後に回ると、ポケットから小型拳銃を取り出し、姿を確認することなく後ろ向きに発砲。


「ぐっ!」


 発砲音と同時に男たちの悲痛な声が漏れる。


 そこから推測するに、被弾しただろうが、確かめる間もなく、由良はその場を後にする。


 目指すは、最上階。


 あの時、先咲さんを見つけたあの部屋だ。

< 127 / 163 >

この作品をシェア

pagetop