魔道師と暗殺者

「どけぇええええ!」


 由良は銃弾を避けつつトンファーを振り回す。


 鈍器というのは、この場においては、もっとも優秀な武器。


 殴るという単純作業に特化した武器は、刃こぼれもなければ、弾丸切れもない。


 あとは、自分の体力次第だが、こんな場所で息切れなどするものか。


 廊下を駆け抜け、三番目の部屋。


 先咲さんを見つけた窓がある部屋。


 鍵が壊れるぐらい力いっぱい蹴り破る。


 そこに広がっていたのは、真っ暗で蝋燭だけが光源の薄暗い部屋。


 床には魔方陣が描かれていたが、そんなもの由良の目には入らない。


 彼の目に入ったのは、黒フードに包まれたあのときの男。


 あの時同様、いやらしい笑みを浮かべている。


 前口上など語らせない。


 悠人の捉えられている場所も予想ができているのだ。


 由良は、拳銃を構えると素早く男に向けて発砲。


 残り全弾5発。


 全弾命中。


 男は言葉もなく鮮血を流して倒れこんだ。


 あっけないが・・・悪党の最後なんてこんなもの。


 余韻なんて邪魔なだけだ。

< 129 / 163 >

この作品をシェア

pagetop