魔道師と暗殺者

 “我が主に祈る、我の言葉に答え、今ここに姿を現さんことを”


 魔方陣でしっかりと自分を取り囲んでから、呪文詠唱。


 透き通るような古代アラビア語。


 口にした瞬間、周りの世界が揺れる。


 始まった。成功したのだ。


 悠人は、ゆっくりと息を整えて、杖で床を三回叩く。


 ここから先は、一瞬たりとも気が抜けない。


 自分と魔方陣の中にある床だけを残して、一面が光の世界に変わる。


 後ろから笑い声が聞こえる。


 こっちを向きなよ・・・。


 悪魔の囁き声。


 一般的に魔法というのは、日本で言う降霊術に近い。


 天使を召還し、彼らに自らの願いをかけるのだ。


 だが、天使を召還する際には必ず悪魔のささやきが付きまとう。


 彼らに耳を傾けたら最後。


 一瞬で地獄のそこまで連れて行かれる。


 魔方陣の中にさえいれば安心・・・そんなのは迷信だ。


 大切なのは、何者にも負けない強大な精神力と集中力。


 魔法使いにとって、もっとも重要な要素である。


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