魔道師と暗殺者

「!」


「!」


「何だと?」


 最初に声をあげたのは、自分でも、先咲さんでもなく、先ほどから満面の笑みで拷問を眺めていた変態野郎。


 それに、つられて自分も顔を上げる。


 そこには・・・・・・・・・・。


「先咲・・・さん?」


 あの時、男はこう命令した


 ・・・・『止めを刺せ』・・・


 そのとき、『誰の』と言う言葉を付け足すべきだった。


 だから、彼女は止めを刺せた。


 ・・・・・・・・・由良ではない。


 もちろん、フードの男でもない。




 先咲さんは・・・・・・自分で自分の胸を刺していた・・・・・・・・・・。




「ごめんなさい、本当にごめんなさい・・・私がいたせいで・・・私のせいで・・・悠人も朝倉君も・・・。」


 泣きながらあやまる先咲さん。


 涙が頬を手繰り、自分の顔に落ちてきた。


 ソレと同時に、生暖かいものも由良の髪の毛に落ちる。


 ・・・・・・・・先咲さんの心臓から流れ出る鮮血だった。


「ごめんなさい・・・私が・・・。」


 必死にあやまる先咲さんを見て、由良は思った。


 女の頬を涙でぬらし、友達の彼女の髪の毛を血で汚すなんて・・・俺は、どこまで悪党なんだ・・・。


 その罪を償えというなら、いくらでも償おう。


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