魔道師と暗殺者
~悠人~


 その日の放課後。


「なんで、俺がお前にチャーシュー麺奢らないといけないんだよ?」


 長州館は、学校から歩いて5分ぐらいにあるラーメン屋である。


 頑固親父の料理長と、リーズナブルな値段が魅力の学生に人気のラーメン屋だった。


「なんでって・・・約束しなかったっけ?」


 悠人は、チャーシュー麺を食べながら、由良に声をかける。


 悠人の衰弱は本人が認識したどおり、致死量だった。


 だけど、唯一の救いがあった。


 あの時、髪の毛に残ったわずかな魔力である・・・。


 本来の自分の祭壇で呪文を唱えること、三日三晩。


 悠人は何とか動けるまでに回復する。


 そこまでしてでも、早く回復しなければ、ならない理由が悠人にはあったからだ。


「してねぇよ。だいたい、お前は俺にチャーハン奢るんじゃなかったのか?」


「そんな約束したか?」


 正直、覚えてない。


 だけど・・・なんとなく・・・そんなような気が・・・・。


「したよ!」


「いつ?」


「いつ・・・だったかまでは、覚えてないけど・・・。」


「夢でも見ていたんじゃないか?」


 そんな言葉でまとめておいた。


 悠人がどうしても早く回復して行わなければならなかったこと。


 それは・・・自分が守ると決めた女性。


 先咲美琴の治療だった。


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