魔道師と暗殺者

「え?桜沢君。」


 その声は突然聞こえた。


「え?」


 思わず声を上げる悠人、そんなはずはなかった。


 自分はラジエル様を召還したはずだ


 なのに、何で今目の前に今日、フラレタばかりの先咲美琴が・・・。


「!」


 瞬間、魔法使いにとっては決して切れてはいけないはずの集中力が切れた。


「しまっ・・・。」


 「た」を言う余裕はない。


 歪む世界、襲い来る吐き気。


 光の世界はどこかに消え、見慣れた祭壇が目の前に広がる。


 歪んでいるのは、この世界か・・・それとも自分の視界か・・・。


「うっ・・・。」


 思わず、立っていられなくなって床に足をつける。


 今にも口から何かを吐き出しそうになるが、今日みたいな大掛かりな魔法を使う場合は、半日間、絶食するのが基本。


 胃の中から、何かが出てくる心配はない。


 それでも、吐き気がおさまる気配がない。


 悪魔の囁き声が聞こえる。


 ・・・ここから出てきなよ。出てくれば楽になるよ。


 うるさい。


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