魔道師と暗殺者

「分かってる・・・それでも、俺は嫌なんだよ・・・。」


「由良、私だってこんなことは言いたくないし、言えた義理でないことぐらいわかっている。しかしな、一度血で汚れた手は二度と拭えん・・・。」


「もう、朝から何辛気臭くなってるのよ。この親子は?ほら、由良もさっさと食事済ませなさい。学校遅れるわよ。」


 自分の母親はとても強い。


 こういう瞬間にとても感じる。


 どんなときでもマイペースで、闇に染まった自分も父親も現実に引き戻してくれる。


 本当は一番力がなく、一番自分が危険な立場にいる人間だというのに・・・。


「あぁ、ゴメン。お母さんお弁当は?」


「ほら、あそこの机の上。」


 母親が指差す先には地味なハンカチに包まれた四角い箱が見える。


「おぅ。それじゃあ、俺もう行かなくちゃ行くから・・・。」


 ゴハンを一気にかきむしり、お弁当をかばんに詰め込む。


「気をつけなさいよ~。」


 どこの母親でも言う言葉。


 その言葉にどれほどの意味があるのか?


 特に考える必要はないのだろう。


「それじゃ、いってきます。」


 どこの子供でもいう言葉を返し、由良は家を出た。


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