魔道師と暗殺者
父の職業は『暗殺者』
それが由良の育った家庭環境である。
敵が多く、いつ自分も狙われるか分からない・・・。
いや、自分が狙われるだけならまだいい・・・。
いつも犠牲になるのはその家族・・・。
だから、由良も小さい頃から護身用にさまざまな能力を身につけた。
自分の身を守るための力のはずだった・・・。
いつからだろうか?自分も父と同じように人を殺すようになったのは・・・。
『学校に行くべきではない。』
そんなことは父に言われなくても自分でも重々承知している。
組織の秘密、裏、それらを知る人間が普通の人間と多くの人間関係を作ることは、それだけ相手に隙を作ることにつながるからだ。
兄が死んだことは、あいつの力不足だったと言い切ることができる。
しかし、何も知らない何の訓練も受けてない自分のクラスメートが同じ目にあったら?
それでも由良は思う。
「・・・俺はまだ、17歳だぞ。」
思わず声にでる。
それが身勝手な考えだということに分かりながらも、感情が追いつかない。
自分の若さゆえの葛藤を抱えながら、由良は学校に向かった。