魔道師と暗殺者
「それで、用件は?」
「こいつについて、知っているコトを教えてください。」
言いながらポケットから取り出したのは、今日の昼休みに黒ずくめの男からもらった先咲美琴の写真。
「・・・・・・・・・・・・・・・?今回のお前の、ターゲットか?」
「詮索するのですか?」
「いや・・・だが、ご法度じゃないのか?」
分かってる。
暗殺者として、ターゲットの素性や背景を探るのは完全に禁則事項。
殺す相手は人間じゃない。
毎朝、地下の射撃場で撃ち落している写真・・・。
だけど・・・・・・・・・。
『俺?俺の好みは、そうだな・・。先咲さん・・・とか?』
なんで、こんなときに昨日、ポーカーやったときの友人の言葉が浮ぶのか・・・。
「欲しいのは情報です。いいから知っているコトを教えてください。」
黒い男からの話だけで行動に起こすことなんて出来ない。
理由が欲しい。
何でもいい。
・・・・・・彼女を殺せるだけの理由が。
「はぁ・・・とりあえず、金は?」
言われて由良はポケットから、茶封筒を取り出し、黙って男に渡す。
「最近、景気悪くねぇか?」
「最初に金額を提示したのはそっちでしょ?」
「まったく・・・誰に似たやら・・・」
男は溜息をつきながら、ポケットからタバコを取り出し、一息つくと・・・。
「とりあえずな・・・お前が持ってきた写真の女な・・・そいつは、魔女だ。」
「・・・・は?」
その、あまりに聞きなれない単語に、由良は思わず、我が耳を疑った。
だが、男の顔は最後まで正面を向いて、決して笑顔を向ける様子は見えなかった