魔道師と暗殺者

「逃げて・・・・ください・・・。」


 弱々しい先咲さんの声。


 自分の聴覚を持ってすれば、聞き取るのは難しくない・・・。


 ・・・・・・・・何の罠だ?


 当然由良はそう思って武器を構えるのをやめなかった。


 しかし・・・


 ・・・・・・・・・・殺気が消えている・・・?


「先・・・。」


「逃げてください!」


 自分の言葉にかぶさるように、先咲さんが怒鳴った。


 ・・・・・・・・・・・・そういうことか・・・・・・・・・。


 由良はその瞬間、理解した。


 情報屋の言葉が頭をよぎる。


 『こいつは・・・魔女だ・・・』


 違う。


 先咲さんが魔女なのではない。


 もし、魔女がいるとしたら・・・・・


 それは・・・・・・・



 
 ・・・・・・・・・先咲さんを操っている誰か・・・。



 


 魔道師に戦い方は噂に聞いている。


 彼らの戦い方は簡単に言うなら、より狡猾で、残忍で卑怯な方が勝つ戦い方である。


 自らは決して表に出ることはなく、時に人を騙し、時に呪いをかけ・・・そして、自在に操る・・・。


だとしたら、この場は・・・。


「分かった。」


 ・・・・逃げるべきだった。

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