魔道師と暗殺者
「アフリカは、暑いから嫌いなんだよ。」
本当のコトを言うのがイヤなので誤魔化しておいた。
“まったく・・・あんな幸薄そうな顔のどこが良いのか・・・”
シャーリーの溜息。
「別に、良いだろう・・・別に!」
“甘いわね・・・これだから、人間の男って・・・”
「うるさいなぁ~・・・」
それぐらい、自分だって分かっているんだ。
だけど・・・俺は、魔法のために人の命を奪うような非道な人間にはなりたくないんだ。
だって、それじゃあまるで彼女のマスターみたいじゃないか・・・。
“静かに・・・お客さんが着たわよ”
シャーリーの声色が変わったので、悠人も彼女が見ている視線・・・東の空を遠く見つめる。
自分の視界ではまだ良く見えないが、彼女が言うからには着たのだろう。
しかし、次の瞬間、雲が切れ隠れていた月光が舞い落ちる。
そして・・・悠人は影を見た。
全身を黒装束で包み、顔を覆面で隠している。
月光を浴びて、先咲さんの家の屋根で構えているその姿はとても美しいと思った。
「ニンジャ・・・?」
身体が震えている。
正直・・・怖かった・・・・。
相手の威圧感はその手については素人同然の悠人でもわかるぐらい圧倒的だった・・・。