魔道師と暗殺者

「だって、あんた、昔こういうの好きだったじゃん?」


「何年前の話だよ?・・・ソレより、いったい何しに来たんだよ?お前?」


 近くのイスに座り、本をパラパラとめくっていく。


 見たいページはすぐに見つかった。


「ん?バカンスだよ。最初に言ったじゃん?」


「だったら、ホテルにでも行ってくれ。ここにいても夕飯の一つも出ないぞ。」


 事実だった。


 今日は夕飯を食べる気はない。


 ダイエットとかそういう意味ではなく、今日は絶食しなければならない理由があるのだ。


「え~。そんなぁ~・・・。せっかく、悠人さんのおいしい~お料理が食べられると思っていたのにぃ。」


「やっぱり、それが目的か?」


「ん~・・・それだけじゃないけどねぇ~。」


 姉が言葉の前に『ん~』をつけるときは、重要な話をするときの口癖。


 だいたい何が言いたいのか、分かってる。


「ロンドンになら、いかねぇぞ。」


 先に言葉を呼んで否定する。


 両親がいまだに住んでいるロンドン。


 第15次薔薇戦争が行われているロンドン・・・。


 父が人質にとられ、母がまだ戦っているロンドン・・・。


「またまたぁ~そんなに、突っ張っていても可愛くないぞ。」


 冗談で言ってると思ってるのか?


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