アップルパイの恋人
私の少し前を歩く男の人


その人が手に下げている白い紙袋袋から、甘い香が漂っている



なぜか ゆっくり、ゆっくりと歩くその人



背が高くて…栗色の髪をワックスで優しく流して



お洒落な感じが後ろ姿だけで十分にわかる


その人の横に並んだ時



甘い香はいっそう強く漂い…私はうっとりしてしまう



私がすれ違うと…その人は立ち止まった


つい…顔を見てしまった


優しげな目…口元…。素敵な人。



思わず立ち止まる程の…。


甘い香に包まれたその人は


私がすぐ後ろから来ていて、ゆっくり歩む彼を追い越すまで気がつかなかった様子で あっと…少し口を開いて 驚いた顔をしていた



そのまま…すれ違って私は店を出た


アップルパイの香だ…
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