君が教えてくれたこと。
プロローグ
「ねぇ、君名前なんて言うの?」
突然向かいの子が話しかけてきた。
向かいの子って言うのは、病室の向かいのベッドの子。
「宗谷 秀。」
「そうや、しゅうね!」
「…君は?」
「私は未来。藤咲未来。」
―ふじさき、みらい。
それが君の名前だった。
明るく、元気な子。
「秀くんは骨折?」
僕の足を指差して聞いてきた。
「うん。階段から落っこちちゃって。」
笑いながら話したら、未来ちゃんは「あははっ」て、「ドジだなぁー」って笑った。
僕は今まで彼女とか出来たことがなくて、おまけに人見知りだから未来ちゃんのようなタイプは苦手。
「未来ちゃんは…」
「私?私は……」
彼女は少し黙って、
「関節がね、ちょっとズレちゃってて、くっつけるんだ。」
そのとき僕は医学的知識はもちろんなかったし、もっともそれらしかったから、へぇー。と普通に流した。
今考えると、ツラい一言だったんだね。
.