秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
まったく落ち着く気配を見せないあたしの取り乱しように、最初は戸惑っていた先生だったけど。
やがて、ゆっくりと口を開いた。
「どうかお聞きくださいませ…真裕様。いわば、母上の遺言のようなものです」
「…!?」
「……まずは謝りたい。黙って姿を消したことを謝りたいと。仰っておいででした。そして…それでも愛していると。…これだけは、自分の口で伝えたい、とも…」
……だから……それを、聞きに来たんじゃない…。
あたしは母様を恨んでなんてないよって。
あたしも大好きだよって、そう言いに来たんじゃない。
それなのに…。
「そして」
ごそごそと懐から白い封筒を出す。
「もし万が一、自分の口で言うことが出来なければ……そのときは、これを渡してほしいと言われました。私の手からこれを、貴女に渡す日など……来てほしくはなかった」
虚ろな意識の中それを受け取り、何も考えずに中を開いた。
便箋が二枚。
そこに書かれていたのは、六年前の真相だった。
――真裕へ
あなたがこれを読んでいるということは、私はもうあなたのそばにはいないのですね。
ごめんなさい。あなたの成長を見守ることができないのが…唯一の悔いです。
けれど、親が子より先に逝くのは世の常。自然なことです。
少し早くて申し訳ないけれど、あなたはまだ若いのだから、これを糧に成長しなさい。
でも…しばらくは、母のことも思い出してくれたら嬉しいな。
…今これを書いている時点でのあなたは、もう十六歳ですね。
私の病気が発覚し…あなたを置いて出て行ってしまってからもう五年です。
あの頃の話をさせて下さい。言い訳がましくてごめんね。
あれは……あなたがコンクールで賞を頂いたと連絡を受ける直前でした。――