秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
―――……
『悪性……リンパ腫…』
…自分の耳を疑った。
目を疑った。
挙句、その一言を発した目の前の相手を疑った。
『今ならまだ、治療をすれば治る見込みは十分にあります。どうか治療に専念ください』
治療をすれば……治る。
治る…のね?
『アメリカの最先端の技術を持った病院を紹介します。あそこならば、きっとすぐにいい対応をしてくれるでしょう』
いくらそう言われても、ショックなものはショック。
小さく頷くだけで、声は出なかった。
「ふう……」
大きくため息をついて頭を抱える。
あれからうちに帰る勇気も真裕のコンクールに行く勇気もなくて、ずっと車の中にいる。
医師がそばについてしきりに慰めを口にする。
「あの医者の言う通りでございます。幸いまだレベル2。あの病院なら必ずや治癒してくれるでしょう」
「ええ…ええ。分かってるわ。だけど……」
あの子に……なんて言おう。
隠しながら治療するのは無理に決まってる。
だけど、まだ幼いあの子にこんなこと言いたくない。
弱気になってはいけないとは思うけど、百パーセント治る保証なんてないのだから。
もし……もしものことがあったら。
そう思ったとき、一つの案が頭に浮かんだ。
けれどそれは、同時に。
母親として……最低の決断だったと思う。