秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
人というのは現金なもので、自覚すると急に痛み出してくるのだから不思議だ。
ズキズキしだした左手を差し出して、いつの間にか右手の薬指にはめられていた指輪をじっと見つめた。
母様と父様の……婚約指輪…。
「あら。それ婚約指輪? ま、もしかして…」
「違う」
「ええー? 違うの? あ、そうよね。そういえばもう結婚してるんだものね。そこは結婚指輪だわ! ちょっと楓、あんたそのくらいのことはー」
「勝手なことしておきながらなに言ってんだよ…」
た、たしかに…。
事後報告されたんじゃねえ?
うん…。…うん。
「まおちゃん。私、あなたのいいお義母さんになるからね」
「えっ…」
「…真琴さんには……敵わないけれど。でもいないよりマシでしょっ? 遠慮なくなんでも言ってね。絶対協力するから。ね…」
ママ…。
「ありがとう…ママ…!」
どうして……かっくんもママも、こんなに優しいの?
あたしなんて迷惑かけてばっかりなのに…。
「水くさいこと言わないの~。楓なんてだって妻なんだもの❤私にとっては娘だし、当たり前でしょ? 家族なのよ、もう」
とても優しい、陽だまりみたいにあったかい笑顔でママはそう言った。
そして、またぽろぽろと涙を流すあたしを、なだめるように抱きしめた。
「ママ~…!」
…母様。
あたし、幸せものみたい。
こんなに想ってくれる人がたくさんいて、そばにいてくれる。
本当に…。
幸せものだね…。