秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
…そうしてその日もまた、教室の掃除で半日が終わり。
ようやく落ち着いた頃にはもう帰りが間近だった。
『しかしおめぇ、本当に心当たりはねぇのか?』
『ないっちゃないけどあるっちゃある』
『どっちよそれ』
『どっちも?』
シュンの問いかけに曖昧に答えた真裕の言葉に、すかさず突っ込みを入れるハディ。
休憩時間いつものように集まってきたところだった。
『だって…。ねえ? かっくん』
『いーや。間違いねぇ』
『でもさ、ここウィーンだし』
だからじゃねぇかよ。
ウィーンにまで全く同じようなやつがいるかってんだ。
よっぽど暇なんだろ、こんなとこまで追ってくるんだから。
『そっか…。夏休みなんだね』
『そういえばそろそろ夏だわね。休みは日本に帰るの?』
『まお、生まれ育ちも血筋もフランスだよ。日本に住んだのは去年一年だけでー、その七年くらい前に母様の実家に遊びに行ったくらいで。帰るとしたらパリ』
『そおなの? 藤峰真裕は日本人だと思ってたわ』
本気で驚いた様子のリジュに、メイリーが言った。
『あら知らないの? 藤峰家って、日本の姓を名乗ってはいるけど…その昔、パリ有数の上流貴族だったって話よ。ねえ?』
『俺に振るな。本人に振れ』
真裕のことなら何でも俺っつー風に結び付けるんじゃねぇよ。
『き、貴族…? そういえばなんか聞いたことあるかも』