秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
野木さんの物静かな声と共に扉が開き、今日のお客様…谷川様方が見えた。
「や、これは谷川様。わざわざご足労頂き、申し訳ありませんな」
「いえ。こちらこそ、突然予定を変更してしまい…。オーストリアまでご足労頂いたのは、こちらも同じです」
「そうですか。それではまあ、お座りください」
父様がにこやかに、仕事モードで接客を始めた。
ハッとしたあたしは、慌てて立ち上がる。
「初めまして。真裕でございます」
とりあえずあたしも仕事モードでご挨拶。
谷川様の奥さま…副社長が、ぴゅんっと飛んできていきなりあたしの手を握った。
「まあ…❤あなたがご令嬢の真裕様? まあまあまあ。可愛らしいし、とてもしっかりなさってるのね。さすがだわ」
「あ、ありがとうございます」
なんか……目がすんげぇキラキラしてるんだけど。
どしたのこの人。
「ふむ…。して、藤峰様。真裕様はおいくつで?」
「真裕ですか。これは…確か来年十八ですが」
「ほお。十八ですか…」
うむむ、と考え込みだした谷川様に、思わず首を傾げるも。
とりあえずは始めなくてはならない。
「藤峰様」
「は?」
「お話合いの前に……一つ、頼みごとがあるのです」
「頼み……ごと?」
始め……ようよ。
早く始めて終わろうよ。ちょっと、ねえ。