秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
あたしのそんな思いもむなしく、ソファに腰を下ろした谷川様は口を開いた。
「実は……うちには一人、息子がおりましてな。今回合併のお話をさせていただいたのは、その息子と真裕様の縁談の申し込みも兼ねて、なのです」
「…!」
「ひ…?」
え……縁談……ですとな…?
ちょ、なにを仰っておいでで…?
「やはり両家の繋がりがあってこそ、仕事もうまく行こうというものではないかと。そう思いましてな?」
「左様で…。しかし…」
「そりゃあうちは、藤峰様に比べれば弱小もいいとこ。傘下に入るでもなく合併などと、おこがましい話だと存じてはおります」
いやいやいや…ちょっと、待とうか。
そうじゃなくてさ。
てかそれあたしん話でしょ? なぜこっちをちらりとも見ない。
見れば気付くでしょ!? 隣のこの(すてきな)人の存在にさ…!
「ですが、これからうちは新しい商売を始めようと思っています。この企画にはかなり自信を持っています。なんせ起業当時から温めていたものですから…」
「ほう…どんなものです?」
「それは…まだこちらでも地盤が固まりきっていないので今申し上げることはできないのですが、いずれ必ず成功させましょうぞ。ですからぜひ…ぜひ! 縁談を申し込まさせていただきたい」
ぐっと真剣な顔で父様に詰め寄る谷川様。
父様はというと……。
「……❤」
「……」
……あたしに助けを求めてきやがった。
しかもへったくそなウインクで。
「ハア……」
小さく小さーくため息をついてから、えほんと姿勢を正した。