秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
「…あの。申し訳ありませんが谷川様…」
「そんなこと仰らずに! 親のわたくし共が申しますのもヘンな話ですが、あれは結構自慢の息子です。我々から生まれたとは思えない容姿もさることながら、今年で二十ですがもう仕事もこなしています」
いや……そう言われてもねぇ。
そういう問題じゃないっていうかなんていうか。
「まあまあとりあえず会ってはいただけませんでしょうか? 実は今日も呼んでいるのです」
「え"?」
奥様…副社長が、にこにことドアを手で指しながら言った。
思わず顔を引き攣らせてしまう。
「さ、肇(ハジメ)、いらっしゃいな」
副社長が呼びかけると、扉がキイーッと開き……。
「失礼いたします」
低く響く声と共に、長身で茶髪の若い男性が入ってきた。
「初めまして。谷川肇と申します」
さすがに跡取り息子なだけあって、物腰はとても丁寧。
思わず立ち上がって、「は、初めまして」と返してしまった。
「貴女が真裕様で…」
「え…あ、はい…」
―つかつかつか
「え"、え"、え"」
―ぐゎしっ
にゃ!? て、手ぇ握られた!!
なに、ちょっと…っ。やだもう!
「けっっっっこんしてください」
「…………いやですけど」
なに言ってんのこの人。