秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
「いや! 来ないでよ、触らないで!」
差し出された手もパシッと払った。
かっくんの手以外、いらない。
いらないんだもん…。
「落ち着けよ。なんか知らないけど、休んだ方がいいぜ。体熱いぞ、熱でもあんじゃないのか?」
黒髪の彼が、しゃがみこんであたしの顔を見て言う。
ふと目線を上げると、手が伸びてきて額に触れた。
「ほれ。やっぱりな。…つーか本当にガキみたいだな。熱が出ると精神が不安定になるのか?」
『ちょっと、シュン? 彼女どうしたの?』
『泣かせたのか?』
『ちげーよ。おいおっさん。この子休ませた方がいいぞ』
『そのようだね。……おっさんて言うなってこれで二百四十一回目だぞ』
「違うもんまお元気だもんっ。女の子の日だからイライラしてるだけだもん!」
「大して変わらん。…つーかよく恥ずかしげもなく初対面の男に…」
ぶつぶつ言いながら、彼はあたしを抱き上げた。
「にゃああっ!?」
とりあえず叫んでみたものの。
体力はそこまでが限界だった。
急に視界が揺れたせいか、くらっとめまいがする。
眉をしかめて大人しくなったあたしに、ため息をつきながら彼は言った。
「だーから言っただろ? 大人しく言うこと聞けよ」
……じゃあせめて……。
担ぐの、やめてもらえませんかね…。