秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*
――楓サイド――
遡ること一ヶ月ほど前。
始まりは、理事長室に呼び出されたあの日だった。
「君に、話があるんだが…」
理事長と思われる初老の男性が口を開く。
バトンタッチして喋り出したのは、もう一人の得体の知れない外国人の男だった。
「キミキミ、コアラは好きかい?」
「……は?」
コアラ? ……は?
「オーストラリアといえばコアラじゃないか」
いや…うん。まあ言われてみればそうだけど。
なんでオーストラリアが出てくる。
「おいおい違う違う。オーストラリアじゃなくてオーストリアだ」
「ああッ。そ、そおだった」
「あっはっは。自分の国の名前を間違えてどおするんだ」
…激しい間違いようだな。
コアラまで出てくるか? ただの言い間違いで。
「いやーっはっは」
「…?」
愉快愉快と笑うおっさん二人。
俺は何で呼び出されたんだよおい。
思わずため息をついたとき、「そうじゃなくて…話があるんだってば」と思い出したような表情で。
「君に留学の話が来ている」
理事長がそう言った。