出逢い
遅刻しているにも関わらず、私は立ち止まってその男性を見つめていた。
しばらくその男性を見つめていた私は、手に握っていた携帯を開き友人にもう少し遅れるというメールを入れる。
送信完了の文字をみて携帯を閉じ、未だにヒラヒラと気持ちよさそうに泳いでいる紙の束を追いかけている男性をみる。
沢山の人達が行き交う街中でその姿はとても目立っている。
が、誰も我関せずといった感じで男性に話し掛ける人はいない。
男性を見つめながらゆっくりと近付いていく。
ヒラヒラと一枚の紙が私の目の前を泳いできた。
その紙をそっと手で掴み
「あの…。」
目の前にいる男性に話し掛けた。
ゆっくりとした動作でこちらを振り向いた男性と目が合った。
そして、男性の目線が私の手元にいく。
「あっ、それ拾ってくれたんですか?」
「え、ええ。
あの、どうぞ。」
ちょっと緊張しながら私は捕まえた紙を男性に差し出した。
男性は紙を受け取りながらふわりと微笑んで、
「ありがとう。」
と私の目を見つめながら言った。
その瞬間、私の時間が止まった―。
ように感じた。