極甘王子はいかが?
『おぉーっ! キレーな桜!!』
前に住んでいた田舎にもあったなぁ。
おっきい桜の木。
そんな懐かしさに埋もれていると、桜の木の下に、座っている人影を見つけた。
あの人に見つかっちゃダメかな?
もう、下校時間は過ぎてるし。
あまりウロウロしないで下さいねって念も押されてる。
でも、私は足が縫い付けられたようで…そこから離れられなかった。
『誰?』
オトコノコとも、オンナノコともハッキリ言えないような綺麗な声。
こっちを一切見ずに投げかけられた言葉は、一瞬誰に宛てられたものかわからなかったけど、多分私宛。
『ごめんなさい…新入生予定の者です』
名前を言ったら先生から怒られちゃうかな、と思ってのズルイ答え。
でも彼はそんな事を気にも留めずに
『キレイだよね、このサクラ』
と言って微笑んだ。