極甘王子はいかが?
「…?」
なんだこれ?
目を開けると、触れていたのは大宮くんの唇で。
大宮くんは私をからかってた時の面影は一切なく、何かに怯えていた。
「やっぱり、……。
壱臣さんの嘘つき」
僅かに震える大宮くん。
その瞳には、落胆、恐怖、侮蔑が確かに映っていた。
ただならぬ様子に、うろたえるしかない私。
今のシチュエーションの何処に、彼を恐怖に陥れるスウィッチがあったのか…。
「大宮くん…?」
結びかけているネクタイを手に、どうしたら良いものかと途方に暮れる。
しばらく考えた後、結んでしまおうと手を動かすと、パシッと叩かれた。
「…ぇ?」
「ごめん…もういいよ。
ペアの申請は僕が出しておくし、ここに誰か呼ぶから。
そのままここに居てね」