極甘王子はいかが?
そう言って立ちあがった大宮くん。
髪に覆われて表情は読めなかったが、口元は弱弱しく笑っていた。
こんなときでも笑おうとするのか、彼は―――…。
彼は5メートルくらい離れて携帯を取り出し、どこかへ電話を掛ける素振り。
電話の相手は、誰?
2,3言話すと電話を切って私に体を向ける。
「百瀬を呼んだから…5分くらいで着くって」
「……うん」
「隼人も来るだろうけど、アレは犬だとでも思えば大丈夫だから」
「……うん」
自分が震えてるのに、他人の心配ができる大宮くんはすごいと思う。
私が同じ状況になったとき、きっと私は同じような気配りはできない。
「大宮くん、」
「…何?」
「ごめんね」
何をしちゃったのか分からないけど、今はただ謝りたい。