僕の世界は一日限り【BL】

「……何も聞かないんですか」

ドリンクを飲み干した彼は、
そう聞いてきた。

お人よしだからって、
そこまで首突っ込むとは限らない。

彼に声をかけたのは、
俺の見える所に
泣いている人がいるのを、
ほっとけなかった。

ただそれだけなんだ。

別に、泣いていた理由まで
聞くつもりは無い。


「俺からは聞かないけど、
 何か聞いて欲しい事、あるの?」

そう聞くと、彼は微妙な顔で俯いた。


「俺、相談に乗るのは得意じゃないけど、
 吐き出すには格好の相手なんだ」

「……なんでですか?」

「何聞いても、すぐに忘れるから」


彼は不思議そうな顔をした。
……むしろ不審げか?




「だから誰かに聞いて欲しいんなら、
 言ってみろよ。

 大丈夫、明日には全部忘れてるから」


やっぱり彼は不審そうにしていたけれど、
聞かなかった事にするとか、
そんな感じに流すんだろうと納得したのか、
口を開き、愚痴を吐き出し始めた。



どうせ通りすがりの他人なんだし、
気楽に吐き出せばいいよ。


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