君へ。
その顔を見たとたん、アタシまで何か切ない気持ちになった。


「……木田がさ、研修の時のバレー大会で田中サンおんぶして処置室行った時の事…覚えとる?」


『うん』

あぁ、思えばあの時からアタシは木田クンを見るとドキドキし始めたんだっけ…。


「オレあん時何かめちゃめちゃ嫌な気分になって、田中サンを連れてくのはオレがやりたかった…って、思って。そん時本気だって気付いた」


そう話す幸田クンはその時を思い出すようにゆっくりゆっくり言葉を並べる。





あぁ、同じだ。アタシもそうだ。

アタシも木田クンを独り占めしたくて、自分からいつも話しかけて…。

『………3年』

「えっ?」

アタシのいきなりの言葉に驚く幸田クン。


『高1の時からだから、今の彼氏とはちょうど3年やと思う』


いつだったか、ゆうちゃんから無理矢理聞き出した事を幸田クンに話した。


「3…年?………ハハハ、すげーな(笑)そんなん太刀打ちできねーわ!」

一瞬、かなり驚いた顔をしたけどすぐにいつもの笑顔になる。
……かなり、無理してるってすぐ分かった。



『……諦めるん?』


「…………さぁ。でも!…田中サンがしんどい時、傍にいれたらって思う」
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