君へ。
少し沈黙していると藤本サンが急に喋り出した。

「梅田サンさー………好きな人とかいる?」

『……は?』

突然の質問にアタシは目を見開いて藤本サンを見る。

「いやっ!なんつーかほら!最近元気なかったからどうしたんかな?って。今日はいっぱい笑ってくれたけど」

タバコに火をつけながら横目でアタシを見る藤本サン。

『…今日誘ってくれたのって…』
もしかして……?


信号で赤になり止まる。
藤本サンはハンドルから手を離しこっちを見て、


「……元気出た?」
ニッコリ笑って少し首をかしげた。



一気に目頭が熱くなる。


なんて優しいんだろう。

何でアタシにこんなにしてくれるんだろう。


アタシは必死に気付かれないように涙をおさえた。


『…好きな人なんていませんよ。最近疲れてただけです!』

アタシは精一杯の笑顔で藤本サンを見た。

「……そっか、そんならえぇんやけどね!好きな奴出来たら言いやぁ?いつでも相談のるで!」


『アッハハ!はい、そん時はお願いします!』


車内の雰囲気は和んでまた楽しい話をしながら会社に向かった。



会社に着きアタシはお礼を言って車から降りる。

『じゃあまた明日!』
アタシはペコッとお辞儀をしてドアを閉めようとすると、


「梅田サン!!」
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