君へ。
それから少し忙しい日が続いて藤本サンとはゆっくり話せなかったけど、やっと仕事も一段落着き藤本サンと帰りが一緒になった日が来た。


もうずいぶん木田クンとは会ってない。
ちょうどいいのかもしれないけど、正直寂しい気分になった。


けどそんなことも言ってられない。けじめをつけなければ。



『藤本サン!』

「あっ、梅田サン!おつかれー」

前を歩いていた藤本サンの元に駆け付けていくと、藤本サンはいつもの笑顔で返してくれた。



少しの間世間話をしてからアタシは本題に移す。
妙に緊張して手に汗を握る。
冷たい風が頬をかすめたと同時にアタシは切り出した。


『藤本サン』

「ん?」


ちらっと藤本サンを見てからすぐに前を向いて話し出した。


『前に一緒にご飯食べに行ったじゃないですか』

藤本サンはうんと頷きながら話を聞いている。

『それで、帰りに……何か言いかけましたよね?…あれ、何だったんですか?』


アタシは思い切って話す。
藤本サンを見ると驚いた目でアタシを見ていた。


「………」


藤本サンは困惑した表情のままアタシを見つめていた。

アタシもそらさず藤本サンを見る。


「あれはー…えっと、やっぱり梅田サン好きな人いるじゃないかって」


『…え?』

アタシは予想もつかない言葉に驚く。

「俺分かるんだよねー、梅田サンの目見てたら恋する乙女の目やったし!」


にししっ!と笑いながら話す藤本サン。


アタシはまだ呆然としていた。
だって予想してた事とは全く違ったから。
もしかしたら、藤本サンはアタシの事を…って思ってたから。


でも違ったようで、少しホッとしているアタシがいた。
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